2025年、脱炭素の流れが大きな転換点を迎えた。世界的には、米国トランプ大統領の「パリ協定から離脱(2050年カーボンフリー目標)」し、11月開催のCOP30(国連気候変動枠組み条約、ブラジルで開催)に影響を与え、年末になりEUでは2035年以降エンジン新車発売禁止の方針を撤回しCO2排出量90%削減を条件に販売を継続する事を容認。国内では再生可能エネルギー大型プロジェクトの浮体洋上風力発電建設会社が撤退(円安や人件費などコスト高騰で採算が合わない)や環境問題などでメガソーラー建設に対し政府が規制強化へ動き始めた。その他、バイオマス燃焼(木質チップやヤシ殻を燃料とする火力発電)発電企業の倒産なども報告されている。それぞれの課題と今後の展望について総括したい
メガソーラー
森林伐採・景観破壊
① 土地利用・自然環境への影響
- 山林・丘陵地を造成して設置されるケースが多く
→ 土砂災害リスクの増大 - 観光地・里山景観の破壊に対する住民反発
- 生態系(動植物の生息域)への影響評価が不十分な事例
② 災害リスク・安全性の問題
● 豪雨・台風・地震との相性
- パネル流出・架台倒壊・斜面崩落
- 排水設計不備による土石流誘発
- 台風後の復旧責任の所在が曖昧
● 火災リスク
- パワーコンディショナ火災
- 消防が感電リスクで消火できない事例
👉 気候変動で極端気象が常態化する中、「設置後の安全管理」が重大な論点に
③ 地域住民との合意形成の欠如
● 事業者主導・住民不在
- 説明会が形式的、または事後報告
- 地元自治体・住民が実質的に拒否できない構造
● 利益の地域還元が少ない
- 売電収益は域外企業へ
- 雇用創出・地域経済効果が限定的
👉 結果として
「再エネ反対=住民エゴ」と誤解され、分断が深まる
④ FIT制度由来の歪み(制度疲労)
● 投機目的の事業参入
- 発電そのものより「権利転売」が目的
- ずさんな設計・施工・管理
● 高額買取の負担が国民へ
- 再エネ賦課金の増大
- 電気料金上昇への不満
👉 2025年時点では
FITからFIPへ移行中だが、過去案件の「負の遺産」が残存
⑤ 廃棄・リサイクル問題(将来リスク)
● 大量廃棄時代の到来
- パネル寿命:20~30年
→ 2030年代以降に大量廃棄が確実 - 有害物質(鉛・カドミウム等)の管理
● 費用負担の不透明さ
- 廃棄積立金不足
- 事業者撤退後の「放置ソーラー」
👉 将来世代への環境負債・財政負担の先送り
⑥ 系統制約・電力システムとの不整合
● 発電しても送れない
- 系統空き容量不足
- 出力制御(捨て電)
● 昼間偏重・天候依存
- 需給調整力不足
- 火力・揚水・蓄電池への依存継続
👉 メガソーラー単独では
「安定電源にならない」という現実
⑦ エネルギー安全保障上の懸念
● 海外依存構造
- パネル・インバータの多くを輸入
- 特定国への依存リスク
● サプライチェーンの透明性
- 強制労働・環境破壊との関係性への国際的批判
⑧その他
・光害、表面温上昇による影響、自然災害(雹害、突風など)による被害補償など顕在化していないリスクが内在。
まとめ(課題の本質)
メガソーラーの社会的課題は単なる「反対運動」ではなく、
中央集権的・大量生産型のエネルギー転換を、そのまま再エネに置き換えたことの限界
に集約されます。
次回、バイオマス燃焼発電について2025年を考察します。
