—膨大な予算を投じる「防災」から、知恵で受け流す「軽災」―
はじめに
いよいよ11月2日、日本の防災体制の司令塔となる「防災庁」が発足します。
南海トラフ巨大地震や首都直下地震、気候変動による風水害の激甚化に備え、国は「国土強靭化」の名のもとに今後も多額の税金を投入し、堤防や擁壁などの巨大インフラを整備・補強していくことが予想されています。
しかし、エネルギーや社会システムのサステナビリティ(持続可能性)を追求する私たち「リサエネ」は、ここで一つの根幹的な問いを投げかけたいと思います。
「人工物で自然の猛威を完全に力で押さえつけることは、本当にサステナブルなのだろうか?」
1. 「強靭化」の限界と、膨らみ続ける維持コスト
高度経済成長期に作られたコンクリートインフラの老朽化が全国で進んでいます。人口が減少していくこれからの日本において、全国すべての防壁や堤防を「より高く、より強固に」作り直して永遠に維持管理し続けることは、財政的にも物理的にも不可能です。
また、「どんな災害もハードウェアで防ぐ」という絶対防除の思想は、市民に「壁があるから安全だ」という不都合な安心感(安全神話)を与え、いざという時の避難行動を遅らせるリスクすらはらんでいます。
自然現象の巨大なエネルギーに対して、人間が作った構造物だけで立ち向かうのには自ずと限界があります。(温暖化により想定外の自然現象が常態化)
2. 新しい視点:「防災」から「軽災(けいさい)」へのシフト
そこで私たちが提言したいのが、「軽災」という概念です。
防ぐ(防災)でも、単に被害を減らす(減災)だけでもなく、「自然現象の力を賢い知恵と工夫で受け流し、ダメージを軽微に抑えて即座に回復する」という考え方です。
例えるなら、力と力でぶつかり合う空手やボクシングではなく、相手の勢いを利用して衝撃を逃がす「柔道」や「合気道」のような防災です。
【先人たちの知恵とグリーンインフラ】
「軽災」は決して突飛なアイデアではありません。かつての日本人は自然の力をよく知っていました。
- 霞堤(かすみてい): 川の水をすべて堤防の中に閉じ込めるのではなく、あらかじめ設定した遊水地に緩やかにあふれ出させることで、河川全体の決壊を防いだ先人の知恵です。
- グリーンインフラ・スポンジシティ: 都市全体をコンクリートで固めるのではなく、公園や緑地、雨水庭園を活用して一時的に水を吸い込ませ、ピークをいなす現代技術です。(震災時の液状化対策は必至)
力で水や揺れを押し返すのではなく、「水やエネルギーの抜け道」を作っておくこと。これこそが、環境負荷を抑え、税金の無駄遣いを防ぐ「真にサステナブルな防災」の姿です。
3. 「軽災」が創り出すサステナブルな未来
「軽災」の思想を社会の共通認識(コモンセンス)にしていくことで、私たちの暮らしと地域経済には次のような変化が生まれます。
- トータルコストの劇的な削減:過剰なハード整備費用を抑え、浮いた予算を地域の再生可能エネルギー整備や自立型マイクログリッド、避難環境の質的向上(※WASHや通信確保)へと回すことができます。※WASH(水・衛生・衛生促進)は、Water(安全な水)、Asanitation(衛生設備・トイレなど)、Hygiene(衛生促進・手洗いなど)の頭文字をとった国際的な支援コンセプトです。水(Water)飲料水の確保だけでなく、手洗いや調理、洗濯などに使える安全な生活用水を十分に供給すること。衛生設備(Sanitation)快適で安全な「トイレ(TKB:トイレ・キッチン・ベッド)」の迅速な設置。男女別、多目的、防犯面(夜間の照明など)への配慮が不可欠です。衛生促進(Hygiene) 感染症の流行を防ぐため、手洗い場や消毒液を整備し、避難者自身の衛生意識(清掃や換気のルールなど)をサポートすること。
- 日常と有時が繋がる「フェーズフリー」な街づくり:普段は市民の憩いの場である緑地やスポーツ公園が、有時には水を受け止める遊水地になるような「一石二鳥」のまち投資が進みます。
- 自然との「共生」の意識改革:「災害をゼロにする」という不可能な目標に固執するのではなく、「かすり傷(軽災)で済ませてしなやかに立ち直る」という防災リテラシーが育まれます。
2026年9月8日の「名古屋豪雨」では、2000年9月の「東海豪雨」を教訓に、名古屋市内の各地に「地下の貯水池」を整備し短時間で内水氾濫を受け流した。この構造物も経年で膨大な維持費が必要・・想定された地震では崩壊しない設計だろうが、想定を超えれば被害が増幅されるリスクがはらむのではと考える。
おわりに:防災庁発足の「今」だからこそ
防災庁の新設により、日本の防災政策は大きな節目を迎えます。政府が示そうとしている「強靭化」の方向性に対して、ただ国にお任せの巨大インフラを期待するのではなく、「自然の力を知恵で受け流す軽災の社会構造」へとシフトしていくこと。
株式会社リサエネは、地域エネルギーの自給率向上とともに、この「しなやかで持続可能な軽災社会」の実現に向けて、知恵と技術の提案を続けてまいります。
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