ペロブスカイト太陽光電池

最新のエネルギー事情

2024年、太陽光発電は、売電しその開発費用を回収する方向から、自家消費型太陽光発電の急速に普及する事が予想される。一方太陽光発電のパネル開発が日進月歩で進んでいる。最も注目する太陽光発電パネルが日本発のペロブスカイト太陽光発電である。

日本開発の太陽光発電

2022年の太陽光発電パネル生産量1位が中国45%、2位が台湾の15%、3位が日本の9%となっている。この世界的なシェアが2~3年後には大きな変化をするかもしれない。その期待を背負っているのが、ペロブスカイト太陽光電池である。2009年に日本の桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授らが発明した。わずか数ミリのシートのように薄いタイプの太陽光パネルで、これは非常に軽く屈曲性にも優れている為、これまで設置できなかった、強度不足の屋根や、建造物の壁面、曲がった場所等にも設置可能である。日本が開発を先行してきた、このペロブスカイト太陽光発電を早期に実現できれば、再生可能エネルギー部門での世界的なシェアも獲得可能か

課題解決に向け

素晴らしい発明から15年経った現在も、面積の小さいペロブスカイト太陽光パネルは目にするが、ビルや屋根に広く敷き詰めるような製品化には至っていない。発電効率についてはこの15年余りで大きく進歩し、これまでのシリコン太陽光電池と遜色ないレベルに達しているようだが、強度の面と、耐久性に問題があり実証実験止まりである。しかし2024年スタートから以下のような報道があり早期実用化に向け躍進する兆しが見えてきた。①積水化学工業は開発中の次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」について、2025年までに20年相当の耐久性を実現する方針を固めた。これまでは5年から10年の耐久性とされていた。②岡山大学のヒサム・エルボヒー外国人客員研究員、鈴木弘朗助教らを中心とする研究グループは、中国の南方科技大学との共同研究で、ベンゾフェノン(BP)という分子を添加するとペロブスカイト太陽電池の安定性と性能が向上することを発見した③日産化学は次世代太陽電池「ペロブスカイト」型太陽電池の材料で、2030年の事業化を目指す。新たに開発したのは効率よく発電するための材料で、従来品より塗布しやすく、電池の大型化や量産時の歩留まり改善につながる④株式会社PXPは、この度、「曲がる太陽電池」の量産技術検証のためのパイロットラインを完成させ、稼働を開始した。といった報道が年初からあった。

新築ビルの敷設計画

①積水化学工業株式会社は、東京都千代田区「内幸町一丁目街区南地区第一種市街地再開発事業」で建設予定のサウスタワーに、開発中のフィルム型ペロブスカイト太陽電池が設置されることを発表。②東京電力ホールディングスは積水化学から調達するペロブスカイト太陽電池を28年度に都内に完成する、地上46階建ての再開発ビルの外壁に設置する方針を示している③三井不動産株式会社は国内最大・最高層の木造賃貸オフィスビル建設で、東芝エネルギーシステムズ株式会社と連携し、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の実装・システム構築を発表。建物全体を覆う様な敷設計画は無いが、近未来にビル全体が発電所となる予感。

世界的な開発競争

日本開発のペロブスカイト太陽光電池だが、果たして世界をリード出来るかどうか不安視する情報もある。中国では「広東光晶能源」がペロブスカイトインクを用いる印刷技術を独自に開発し既にペロブスカイト太陽電池の量産技術を開発している。イギリスではスウォンジー大学のSPECIFIC Innovation and Knowledge Centreの研究者は、世界初となる完全印刷可能なペロブスカイト太陽電池を開発したとしている。エネルギー効率は日本の水準にはまだまだ追い付いていないようだが、不効率でも量産化に向けた技術は肩を並べている。

国産にこだわりを

ペロブスカイト太陽光電池にはヨウ素が使われており、ヨウ素は世界第2位の生産国である日本にとっては、量産化しコストダウンを図り、国内の普及に努められる環境下にある。そして、国内の雇用の拡大と賃金のアップの為より良い製品を多くの付加価値を価格に転嫁し、海外に販売できる体制を作って欲しいものだ。それには、課題のエネルギー効率の向上と耐久性アップが、2024年スタートに発表されたことで、大いにメイドインジャパン、ペロブスカイト太陽光発電に期待したい。

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