再生可能エネルギーの転機(2025年)②

最新のエネルギー事情

2025年時点の「バイオマス発電(特に木質バイオマス等を燃料とする“内燃・火力型”」は事業会社の倒産・撤退が相次ぐ背景を考察。

なぜ日本の大型バイオマス発電は倒産・撤退を繰り返すのか

近年、日本各地で大型バイオマス発電事業の倒産や撤退が相次いでいる。
再生可能エネルギーとして期待され、FIT(固定価格買取制度)に支えられてきたはずのバイオマス発電は、なぜ事業として立ち行かなくなったのか。本稿では、その原因を表面的な経営失敗ではなく、構造的な問題として整理し、その本質を考察する。


燃料調達コストという「構造的破綻」

日本の大型バイオマス発電の多くは、PKS(パーム椰子殻)や木質ペレットといった輸入燃料に依存している。国内未利用材の安定確保が難しいため、結果として燃料を国際市場から調達するモデルが主流となった。しかし、2022年以降、国際燃料価格の高騰、円安の進行、海上輸送費の上昇が同時に発生した。
その結果、多くの発電所で「燃料費が売電収入を上回る」状態が常態化し、稼働すればするほど赤字が膨らむという逆転現象が起きた。

これは単なる市況変動ではない。
燃料を海外市場に依存する限り、バイオマス発電は本質的に不安定であることが露呈したのである。


FITが生んだ「楽観的事業計画」の崩壊

FIT制度は、一定価格での売電を保証する仕組みだが、利益を保証する制度ではない
しかし多くの事業計画では、

  • 燃料価格は長期的に安定する
  • 為替は円高基調
  • 稼働率は80%以上

といった、きわめて楽観的な前提が置かれていた。

現実には、燃料供給が不安定化し、設備トラブルによる停止や部分稼働が頻発。
さらに、想定以上の修繕費・保守費が発生し、キャッシュフローは急速に悪化した。

FITは「安全装置」ではあっても「万能薬」ではない。
その前提を誤解した事業モデルが、制度の限界とともに崩れたと言える。


技術・運転面で顕在化した問題

輸入バイオマス燃料は、産地やロットによって品質のばらつきが大きい。
水分率や灰分の違いは、ボイラーの詰まりや腐食、燃焼効率の低下を招き、結果としてメンテナンス頻度とコストを押し上げる。

特に小〜中規模の発電設備では、発電効率そのものが低く、
熱利用(コージェネレーション)が成立しない場合、電力専焼では採算を取ることが難しい。

ここでも、大型火力発電と同じ発想でバイオマスを扱ったことの無理が露呈している。


揺らぐ「環境に優しい」という前提

バイオマス発電は「カーボンニュートラル」とされてきたが、その評価も近年揺らいでいる。

森林伐採後、再成長によってCO₂が再吸収されるまでには数十年を要する。
さらに、燃料の長距離輸送に伴うCO₂排出を考慮すると、実質的には「遅効性の排出」とも言える。

このようなライフサイクル全体での評価(LCA)が重視されるようになり、
ESG投資や金融機関からの評価は低下し、資金調達環境も厳しさを増している。

地域社会との摩擦という見過ごされたリスク

発電所周辺では、煤塵、臭気、騒音、燃料搬入による交通量増加などの問題が発生する。
「地元資源を活用する再エネ」と説明されながら、実態は輸入燃料依存であることが明らかになると、地域の理解は一気に失われる。

行政や住民との関係悪化は、訴訟や操業停止につながり、経営に致命的な影響を与える。
社会的合意形成を軽視した事業は、長期的に存続できない。

倒産が示した本質的な教訓

これらの問題を一言でまとめるなら、次のようになる。

バイオマス火力は「化石燃料火力の延長線」で考えると必ず破綻する。

集中型・大規模・長距離輸送・電気専焼――
このモデルは、再生可能エネルギーの思想と根本的に相性が悪い。

再生可能エネルギーの本質は、
低密度・分散・地域循環・副次価値の活用にある。

大型バイオマス発電の倒産は、単なる失敗事例ではなく、
**「再エネを火力発電の代替として扱うこと自体への警告」**なのである。

おわりに

今後、生き残るバイオマス利用があるとすれば、それは「発電事業」ではなく、
地域の廃棄物処理、熱供給、農業・漁業との連携を含めた地域循環インフラとして再設計された形だろう。

倒産は終わりではない。
それは、バイオマスエネルギーを本来あるべき姿へ引き戻すための、極めて重要なメッセージなのである。

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