2024年4月30日イタリア、トリノで開催された主要7カ国環境相会合(G7)で、2035年までにG7各国の石炭火力発電を廃止するとの合意が成立した。日本への影響を考察してみた。
日本の石炭火力発電所
2023年12月現在日本で稼働中の石炭火力発電所は171個所。火力発電所全体の34.4%の発電量(LNG天然ガス37.0%・石油2.0%・再生可能エネルギー7.4%・原子力発電8.5%水力8.2%)
諸外国の石炭火力発電
欧米の石炭火力発電の現状を見ると、ドイツでは石炭採掘国であり発電容量の21%が石炭火力発電所だが、2038年までに全廃を2018年には決めていた。イギリスでは石炭由来の電源活用は2013年以降減少。2019年時点における石炭比率は容量ベースで約8%と石炭依存度が低いこともあり2025年に全廃する方針。フランスでは原子力発電の依存度が高く、2018年に石炭火力発電は容量ベースで2%と低く、既に廃止されている。アメリカでは石炭火力発電は総量の20%弱を占めているが、バイデン政権は火力発電所の温暖化ガス排出量を2032年から90%削減する規制を導入すると発表した。発電量の2割弱を占める石炭火力発電については、①2039年以降も運転予定なら32年から排出の90%を回収・貯留する②38年までに稼働停止するなら32年から天然ガスを40%混焼するなどと打ち出している。このような背景からG7はCO2排出の多い石炭火力発電の2035年までの全廃を決定した。
日本の石炭火力発電技術
日本の石炭火力発電所では、高度成長時代に大気汚染(燃焼すると硫黄酸化物や窒素酸化物、すすや燃えカスといったばいじんが発生)が深刻な問題だったため、過去40年以上にわたり環境対策技術や効率的な燃焼方法を開発するなど環境負荷を低減する努力を行って現在では石炭火力発電所の煙は浄化処理を行い大気中に放出されている。このような技術で世界の石炭火力発電所を牽引する存在となり、海外にその技術を持つ、石炭火力発電所を建設したり受注している現状。
日本の石炭火力発電の今後
日本では石炭火力発電はそのコスト、安定供給、安全面、エネルギー安全保障の観点から、容量ベースで34.4%と依存度が高い。早い段階から石炭火力の公害対策として、技術的に優れた石炭火力発電所の建替えに取り組んできた背景もあり、2035年全廃となれば損出は計り知れないばかりか、電力の安定供給の観点からも、早急な対策が必要。先日始まったアンモニアの混焼技術や、CO2回収技術を確立し、合成燃料へのCO2利用など、現在の石炭火力発電によるCO2排出量を0にする、いわゆるカーボンフリーを実現する事で、これまでの投資が無駄にならないことを願う。また、安定供給の観点から、安易な原子力発電所の再稼働や建設には私は反対である。
全国のゴミ焼却場を発電所に
日本のゴミ焼却場の数は1067個所にも及ぶ。石炭火力発電所の数が171個所に対し、遥かに数は多い。多くのゴミ焼却場では生ゴミ40%(水分量は80%)を燃やすのに熱量が足らなくなるため燃焼のための補助燃料が必要(ゴミ1トン当たり0.1ℓ~0.2ℓ(原油換算)の化石燃料)とされている。水分量の多い生ごみはメタンガス発酵しガスでエンジン発電。リサイクル不可能なプラスチックや廃木材などは火力発電所と同様に焼却の際の熱を利用し蒸気タービンを回し発電する(熱量が低ければバイナリー技術を利用したり、木質チップやアンモニア混焼なども研究)。今後の全国のゴミ焼却場の建替えの際は、是非ともこの2つの設備を備えたハイブリッドな発電所の建設をして欲しいものです。そしてエネルギーの地産地消を実現し、地球の自然環境に配慮したエネルギー利用を目指したいものです。このような利用の仕方が有る事を国民一人一人が理解し資源(ゴミ)の分別がなされ、円滑に計画が実施されるよう、微力ながら私もコンサルを続けて参ります。