~中干し×小水力×揚水で実現する「水とエネルギーの循環型農業」提案~
近年、日本各地において少雨傾向※1が続き、水資源の安定確保が重要な社会課題となっています。
農業用水、生活用水、工業用水といった多様な水需要が存在する中で、地域ごとに水利用の最適化が求められています。
※1少雨の原因 https://risaene.co.jp/japansabundantwater/
こうした状況下では、農業分野においても従来の慣行に加え、
限られた水資源をどのように効率的に活用するかという視点が、これまで以上に重要になっています。
特に稲作は水利用量が大きい一方で、地域の食料供給や景観維持、水源涵養といった多面的機能を担っており、
単なる節水にとどまらない「総合的な水マネジメント」が求められる分野です。
本稿では、こうした背景を踏まえ、
水利用の効率化と環境価値の創出を両立する新たな農業モデルとして、
- 中干しの高度活用
- 小水力発電と揚水※2を組み合わせた水循環システム
を組み合わせた「水とエネルギーの統合的活用」について提案いたします。
※2揚水発電 https://risaene.co.jp/pumpedstoragepowergeneration/
■ 田植え時期の変更という“リスクの先送り”
田植えを遅らせることは、一時的には水使用量を抑える効果があります。
しかしその一方で、農業経営において重大なリスクを伴います。
- 台風シーズンと収穫期の重複
- 高温による品質低下(白未熟粒の増加)
- 日照不足による収量減
つまり、
「水不足リスク」を「気象リスク」に置き換えているだけとも言えます。
長年の経験に基づく農耕サイクルが、気候変動によって通用しなくなりつつある今、
必要なのは“時期の調整”ではなく、“構造そのものの見直し”です。
■ 提案①:中干しの高度活用による「水と環境の最適化」
水田農業には古くから「中干し」という管理手法があります。
これは一定期間、水田の水を抜き土壌を乾かす工程です。
この中干しを戦略的に活用することで、次の効果が得られます。
● 水使用量の削減
常時湛水ではなく間断的な給水により、
20~30%程度の節水が可能とされています。
● 温室効果ガス(メタン)の削減
水田から発生するメタンは、地球温暖化に影響を与える温室効果ガス(CO2の25倍~30倍)です。
中干しにより土壌に酸素が供給されることで、メタン発生が抑制されます。
● 収益化の可能性
このメタン削減効果は、カーボンクレジット制度※3の対象となり、
農家の新たな収益源となる可能性があります。
※3 https://risaene.co.jp/jcredit/
■ 提案②:小水力発電×揚水による「水の見える化と蓄積」
さらに本提案では、傾斜地農業という条件を活かし、
小水力発電と揚水システムを組み合わせた水循環モデルを提案します。
■ システムの概要
- 上部のため池に雨水や雪解け水を貯留
- 水を流下させながら小水力発電
- 下部で水を一時貯留
- 余剰電力で再び上部へ揚水
■ これは何を意味するか?
この仕組みは、いわば
「水をエネルギーとして蓄え、必要な時に使う」
という考え方です。
つまり、
- 水 → 農業資源
- 水 → エネルギー源
- 水 → 災害対策
という三つの価値を同時に持たせることができます。
■ この仕組みがもたらす5つの効果
① 渇水リスクの低減
水を「流す」から「貯めて使う」へ転換することで、
降雨の不安定さに対応可能になります。
② エネルギーの自給化
農業用水の流れを活用し、電力を創出。
ポンプ動力の一部を自給できます。
③ 中干しとの相乗効果
水使用量が減ることで余剰水が生まれ、
それを貯水・再利用する循環が成立します。
④ カーボン削減の複合効果
- 中干し → メタン削減
- 小水力 → 再生可能エネルギー
農業が“排出源”から“削減主体”へと変わります。
⑤ 防災機能の強化
- 豪雨時:一時貯水
- 渇水時:安定供給
地域インフラとしての価値が高まります。
■ 課題と向き合う視点
もちろん、この構想には課題もあります。
- 初期投資コスト
- 維持管理の負担
- 水利権や制度の調整
しかし重要なのは、これらはすべて
**“技術の問題ではなく、仕組みの問題”**であるという点です。
すでに技術は存在しています。
あとはどう組み合わせ、地域に実装するかです。
■ これからの農業の方向性
これまでの農業は
「経験」と「季節」に依存してきました。
しかしこれからは
「気候変動を前提としたリスク分散型農業」
への転換が求められます。
■ 株式会社リサエネとしての提言
私たちは、これからの農業を
「水・エネルギー・環境を統合した地域循環型モデル」
へ進化させるべきだと考えます。
その第一歩が、
- 中干しによる水管理の最適化
- 小水力と揚水による水とエネルギーの蓄積
この2つの組み合わせです。
■ 最後に
水不足は“危機”であると同時に、
社会の仕組みを見直す“機会”でもあります。
農業は単なる食料生産ではなく、
水資源・エネルギー・環境をつなぐ基盤産業です。
だからこそ今、
従来の延長線ではなく、
次の時代の農業モデルを構築する必要があると考えます。
本提案は、地域特性に応じた柔軟な水資源マネジメントの一案として、自治体・農業関係者との連携を前提に検討されるべきものです。
株式会社リサエネは、
こうした新しい価値創造を通じて、
持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
注)今回の提案は山間地の稲作農業に適した提案であり、全ての水田に当てはまる事ではありません。
