渇水報道に思いを巡らす。
― 気候変動・森林伐採・再生可能エネルギーが揺るがす水循環の危機 ―
日本は古くから「水の国」と呼ばれてきました。
山が多く、雨や雪に恵まれ、川が流れ、海に囲まれている。
私たちは長い間、その豊かさを前提条件として暮らしてきました。
しかし近年、その前提が静かに、しかし確実に崩れ始めているように見えます。
冬なのに乾く日本列島
近年、東日本の太平洋側を中心に
- 冬季の少雨・少雪
- 空気の乾燥
- ダム貯水率の低下
- 山林火災の増加
が目立つようになっています。
背景にあるのは、気候変動による大気の流れの変化です。
変わる気流、変わる水の貯まり方
地球温暖化により、
- 偏西風帯の北上
- 北西季節風の持続性低下
- 西〜西北西風の増加
といった変化が起きています。
その結果、日本列島の高い山々を越えた風が
フェーン的に乾燥した空気として太平洋側へ吹き下ろすケースが増えました。
仮に福井県で大雪をもたらした西寄りの風は岐阜県の山々、長野県の中央アルプス、南アルプスなどを超え関東地方に乾風をもたらす。(富士山も積雪が少ない)
かつては
「関東北部の山々には冬に雪として水を蓄える」
という構造がありましたが、
現在は
太平洋側や関東地方は冬に降らず、乾き
春を迎える前に水が足りなくなる
という状態が起きつつあります。
春の水を支えてきた南岸低気圧
太平洋側の水資源にとって重要だったのが、
春先の南岸低気圧です。
南岸低気圧は、
- 山間部に湿った雪をもたらし
- ゆっくりと雪解けすることで
- 春から夏にかけての水資源を支えてきました
しかし近年は、
- 通過頻度が体感的に減少
- 降っても雪ではなく雨になる
といった傾向が見られます。
これは、
- 気温上昇
- 偏西風の北偏
- 低気圧経路の変化
と整合的であり、
日本の「天然の貯水装置」が弱体化していることを意味します。
雪解けが早すぎるという問題
今年の様に日本海側や北日本で大雪が降ったとしても、
早春に気温が高ければすぐに融けてしまいます。
- 土壌に浸透する前に流出
- ダムに貯まらず海へ
- 夏に使う水が残らない
雪は「量」だけでなく
「融けるスピード」こそが重要なのです。
そこに重なる人為的な開発
気候変動だけが原因ではありません。
私たち人間の土地利用も、水循環に大きな影響を与えています。
メガソーラー建設やバイオマス火力発電燃料目的で山林伐採
- 森林を伐採し斜面を造成
- 表土が流れやすくなる
- 森が持つ保水機能が低下
森林は単なる「緑」ではなく、
雨を受け止め
水を蓄え
ゆっくり川へ流す
極めて重要なインフラです。
見落とされがちなもう一つの影響
― 炭化Jクレジットと森林・海のつながり ―
近年、CO₂削減策として
木質バイオマスの炭化(バイオ炭)によるJクレジットが注目されています。
炭化は本来、
- 炭素を長期固定でき
- 有効な脱炭素手法
であり、否定されるべきものではありません。
しかし問題は、
その原料をどこから得るのかです。
炭化のための伐採が意味するもの
もしJクレジット創出を目的に、
- 健全な森林を伐採し
- 本来水を蓄える森を減らす
のであれば、それは
CO₂を減らす代わりに
水循環を壊す行為
になりかねません。
本当に意味のある炭化とは
株式会社リサエネとして推奨したいのは、
- 取り壊された木造住宅の廃材
- 建設廃材として行き場を失った木材
- 災害木・不可避な間伐材
など、
新たな森林破壊を伴わない炭化です。
二酸化炭素削減と自然保全は、本来両立できるはずです。
森を失えば、海も痩せる
森林の劣化は、山だけの問題ではありません。
- 雨が一気に流れ出る
- 土壌中の栄養が保持されない
- 川を通じて海へ届くミネラルが減る
これは、近年深刻化する
磯枯れとも無関係ではありません。
山・川・海は一つの循環
森林が健全であれば、
- 鉄分
- 窒素
- 有機物
が川を通じて海へ運ばれ、
海藻や沿岸生態系を支えてきました。(自然なグリーンカーボン)
山を切れば、海も痩せる。
その影響はやがて
沿岸漁業の不振として表れます。
脱炭素は「部分最適」では成立しない
再生可能エネルギーは不可欠です。
しかし、
- 森を失い
- 水を失い
- 海と地域産業を失う
のであれば、それは持続可能とは言えません。
CO₂だけを見る脱炭素から、
水循環と生態系を含めた脱炭素へ。
株式会社リサエネとしての考え
株式会社リサエネは、
- 再生可能エネルギーの推進
- 水・森林・海との調和
- 地域と共に続くエネルギーの形
を重視します。
脱炭素は目的であって、
自然を壊す免罪符ではありません。
おわりに
日本の水は、
決して無限ではありません。
気候変動と人為的開発が重なったとき、
その影響は静かに、しかし確実に現れます。
今、私たちが選ぶエネルギーの形が、
10年後、20年後の
「水の日本」を決めることになります。
炭素だけを見て森を切れば、
水と海と地域を失う。
本当に守るべきものは、
もっと広い循環の中にある。
