水素化マグネシウム

最新のエネルギー事情

水素の弱点は、拡散しやすく、静電気程度のわずかな火元で発火し爆発をする恐れもある危険な物質とも言えるが、この水素化マグネシウムは、この弱点を払拭してくれそう。

水素の特長

水素は、宇宙にもっとも多く存在する基本元素で、地球では最も軽く無色無臭の気体だが、自然界では、水や炭化水素等の化合物の状態で存在している。豊富に存在する水素を脱炭素社会実現への切り札として様々な分野で、研究、実装実験が行われ、既に実用化の道筋が整っている分野もある。

水素利用の課題①

水素を燃料として使用する為には、化合物を分解し水素を抽出しなければならない。この抽出する際にエネルギーが必要となる。具体的には水(H₂O)から水素を抽出するには電気エネルギーが必要。その他、化石燃料から抽出する際は水蒸気と反応させ水素を取り出すのだが、水蒸気にする為に熱エネルギーが必要となる。またその際に二酸化炭素(CO₂)も排出してしまう(過去ブログ「水素は製造工程の違いにより色分け」参照)

水素利用の課題②

抽出した水素は利用する為には、保管し移動しなければならないが、その方法として圧縮してボンベで運ぶ、パイプラインで運ぶ、又は低温で液化(-252.87℃)して運ぶ。これらの方法で移動可能だが問題点としてコストが高くなり、事故により安全面で不安もある。

課題解決する「水素化マグネシウム」

水素化マグネシウムは上記課題②を解決する物質として注目を集めている。軽量な固体で常温で安全に運搬も出来るとしている。水と反応して水素を発生させるため、FCV燃料電池車などに搭載し、水素ステーションのインフラが無くても、コンビニなどで水素を買い求める時代が来るかもと報道されている。

課題①については

そもそも水素化マグネシウムを製造する前の水素色が問題。あるメーカーは苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)精製時に副次的に発生する副生水素(ホワイト水素に分類)を使用すれば、CO2排出は少なく脱炭素に向け有効。ただし、水素化マグネシウムを製造過程で高温高圧環境が必要との事で、そのエネルギーがどの程度必要なのか、またCO2の排出量など具体的な開示が待たれる。

水素燃料社会に向けて

今回の水素化マグネシウムは軽量で常温・常圧時は安全で運搬コスト低減できる事、社会的な水素インフラが無くても身近に水素を保管できるなどメリットも大きい。消防法上も安全な物質として扱われるようだ。個人的な懸念として、例えば保管倉庫などで火災が発生した際など、消防により放水をしてしまうと、加水分解が起きて爆発的な火災の延焼に繋がると思うが如何なものか。アンモニアなどの比較的安全な物質で運び必要とする場所で水素を取り出す方法など、様々な水素利用の実装に向けて社会は動いている。

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